宝石との歩み

杉原 敏之 (すぎはら としゆき)

杉原敏之さん 1978年生まれ。山口県出身。大阪コミュニケーションアート専門学校にて、宝石・ジュエリーについて学ぶ。卒業後、スリランカにて宝石研磨修行。2000年 帰国後、大阪の宝石輸入製造卸業者にて勤務。2008年 有限会社ルネッサンス・ジェムにて自社オリジナル・ジュエリーの製作に携わる。2009年FGA-Diploma取得。2010年 バーゼルワールド出展。

有限会社ルネッサンス・ジェム  URL www.renaissance-gem.jp

宝石との出会いは、小学校の頃に流行った水晶集めでした。当時、“集めた水晶を宝石商に持っていくとお金になる”という噂があり、これは探してみなければ!と、ちょっと不純な動機でした。どんなものかもわからず、学校のグラウンドを一生懸命探して実際に水晶を見つけると、それは美しい結晶をしており、動機を忘れて水晶のコレクションが始まりました。その後、宝石への興味がふくらみ、新聞の折り込みチラシに宝石店の広告が入っていると、まじまじと眺めてはダイヤモンドやルビー、サファイアなど名前を覚えていった記憶があります。
高校生の時、自分の好きな事を職業にしたいと思い、宝石の世界へと進む事を決めました。専門学校へと進学し、クラフト、ジュエリーデザイン、宝石学、そしてデッサンやパソコンでの画像編集など、幅広く勉強することができました。勉強した事は今でも仕事に活かせていて、FGAを学ぶ土台にもなったと思います。

専門学校卒業時にもっと深く宝石を勉強したいと思い、スリランカへの渡航を決めました。現地で感じたのは圧倒的な宝石量!さすがは宝石の産出国として長い歴史を持つ国と感激したのを覚えています。そして、そこで与えられた課題は宝石を分類する事。しかも道具を使わず目と感覚だけで数百石の様々な色、種類の宝石を独りの力で行うというものでした。じっくりと時間をかけて、様々な石を比較しながら作業を繰り返すうちに、それぞれの持つ特徴がなんとなく感じられるようになり、数日後には分類にかかるスピードが非常に速くなっているのが実感できました。分類のコースを終えると宝石のカッティングの修行を毎日休みなく行いました。朝から夕方まで毎日のように繰り返していると、このくらいの角度がきれいかな?と試行錯誤したり、色の残し方を考えたり、磨き上がりの違いを感じたりするようになりました。カッティングに関する資料の乏しい中での修行だったので自分なりに日々新しい発見の連続でした。

杉原敏之 fig 1

スリランカでの修行

 日本に帰って勤めた会社はカラーストーンの輸入とジュエリーの製造卸の会社で、クオリティーの高いものを意識していたので、質の良い宝石にたくさん触れる機会に恵まれました。

妻から「自分で学んだ事は自分のもの。宝石の事を理論的にも足固めしてみては?」と強く勧められ、FGA資格への挑戦を決意しました。ちょうど転職と結婚の時期と重なり、勉強時間を作るのに苦労しましたが、家族の支えがあり、ファンデーションに合格する事が出来ました。この勢いに乗ってディプロマも、と甘く考えていると、内容も求められている事も格段にハードになり、ファンデーション以上の勉強が必要になりました。FGAの勉強で悩んだのは、求められている解答が論文形式であった事。決まった答えがある問題ではなく、自分自身の考えを記述していかないといけないもので、ポイントを勉強しただけでは解答ができない自分がいました。問題の求めている事を的確に読み取ることが必要で、過剰な解答も良しとしない形式なので、一体どこまで答えればいいのだろうかと、しょっちゅう問題とにらめっこをしていました。しかし、今考えてみると、こういった問題は実社会において、往々にある事ではないかと思います。例えば商品の説明をするにしても、お客様の求めている事を読み取り、的確に答えるためにはどうすればいいかを瞬時に判断することが必要です。過剰な説明もお客様を困らせてしまうかもしれません。何分、経験的な事を優先して勉強に慣れていなかった私には困難な日々でした。何度もくじけそうになりましたが、通信教育で送った答案が戻ってくる度に、びっしりと真っ赤に添削されているのを見ると、頑張らねばと再び勉強しました。

ディプロマ試験の合格通知を見たとき、本当に合格出来たのだろうか?と何度も通知を読み返したのを覚えています。人生の中でこれだけ勉強して試験に臨んだ事がなかったので、非常に嬉しくて、是非ともロンドンの授与式に出席したいと思い、一ヶ月の時間をとってロンドン行きを決めました。ロンドンでは授与式前日に恒例のカンファレンスがあり、そこで同年度の資格合格者達と出会う事ができ、非常に恵みあるものでした。カンファレンスはその年度の合格者はスペシャルプライスで参加できるので大変お勧めです。

授与式は、歴史あるゴールドスミスホールで行われました。各国から合格者が集まっていて、その家族も晴れ舞台を見に来ていました。授与式が終わると、来場者全員で懇親会へ。仲間たちと合格を喜び合い、苦労話で盛り上がりました。また、諸先生方が合格者達にねぎらいの言葉をかけてくださいました。

ゴールドスミスホール前で。オグデン氏(中央奥)を囲んで

滞在中は、知り合った仲間や先生を訪ねるなど、充実した時間を過ごす事が出来ました。中でもバーミンガムでグウェイン先生を訪ねて行ったときに、突然「この石は何でしょう?」と、試験が始まったのはびっくりしました。グウェイン先生はFGAの試験官を務めていて、「チューリーメダル」と「アンダーソンメダル」を両方持っている世界で2人しかいない方で、FGAの大先輩です。大変お世話になったので嬉しい限りですが、授与式で出会った諸先生方を訪ねるときは皆さんも心して行きましょう。

授与式にてグウェイン先生と

さて、話が戻って現在の仕事ですが、妻がデザイナー(山崎藍子)であり、オリジナルブランドを展開しております。私は仕入れや加工の手配などのマネージメントを主に担当していますが、今までの経験と共にFGAでの勉強が仕事に発揮できています。また、宝石の研磨の仕事は今まで修理や磨き直しが多かったのですが、これからは自分のエッセンスを出せる原石からのカットにも挑戦していきたいと思います。 まだまだ学ぶ事はたくさんありますが、学んできた事を土壌にして成長していきたいと思います。<

その後の杉原さんの活躍は・・・

●現在も日本での仕事の傍ら、ロンドン授与式で出会った方達をはじめ業界関係者と国際的な情報交換を続けています。
●2010年3月BASELWORLD出展
海外ではFGAタイトルは非常に評価が高かったです。おそらく国際的にも取得困難なタイトルとして知られているのだと思います。国際ビジネスではこのタイトルを持っていると信頼度が高くなると感じました。
●2010年6月オランダエナメル&ガラスアート博物館にて当社作品の展示(これはロンドンの資格授与式で出会った方とのご縁で実現しました)
参考リンクhttp://www.renaissance-gem.jp/HTML/event/news20100624.html
●2010年 Gems&Jewellery Autumn 2010 / Volume 19 / No.3掲載
Gem-A CEOのDrオグデン氏に直接取材を受けました。この掲載は当社にとって大変誇り高いものとなりました。
参考リンクhttp://www.renaissance-gem.jp/HTML/article/article2010_gema.html
カテゴリー: 卒業生の声 パーマリンク.

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